モラトリアム属性/こばんねこ
 


君に似た音に掠めたあの日
遊、と書いた音さえも
この右側の心臓の中でほのかに響いた気がして
振り返れば
脱線した走者の流れに埋もれた小さな旗が見えました

言葉は
帰るのです

白い爪のひとつひとつに
その赤は去っていきました
途切れた行列は糸電話のようにされど飛行機雲のように
汚れた純白に進んでいきました

そして君も
帰るのですか

忘れ去られた大きな旗が見える地点
缶コーヒーの空き缶の立つ鏡に囲まれた地点にて
声は
音は
君は
馬酔木は
秋桜は
糸電話は、

ゆすらい
ゆすらって
ゆすらいでゆくのです

旗もまた
ゆすらいで、ゆくのです


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