日本奥地帰省/ブライアン
実り豊かに微笑する大地であり、アジアのアルカディアである。自力で栄えるこの豊沃な大地は、すべて、それを耕作している人々のしょゆうするところのものである
日本奥地紀行 イザベラ・バード 高橋健吉 訳
湿った風は、何も言わなかった。
駅から広がる田の緑は、風に揺れていた。
その向こう。ホップ畑の柵がみえる。
濃い色の風が、
何度も吹いた。
だが、何一つ、語ろうとはしない。
もう、誰でもない。
土着でもなく、余所者でもなく、
ひびだらけのアスファルトに漂うばかりだった。
見覚えのあるアスファルトもまた、
何も語りはしない。
色濃い、景色の一部だ。
夏の、湿った、アルカディアだ。
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