「暮らすように歌う」/ベンジャミン
 
日常にあふれる音の数だけ
日常は動き続けていることに気づく

それが小さな虫の音や
少女が練習するフルートの音色だったり
どこかの家族の会話だったりして
そんなかすかに聞こえてくる音に安心する

部屋ではコチコチと時計が時を刻んで
僕の暮らしはそんなふうに刻まれているのかと
ちょっぴり淋しくなってしまいそうな午後

五時を知らせる「赤とんぼ」のメロディーが
昔から変わらないことにほっとして
気がついたら歌っていた

懐かしい記憶の彼方に
埋もれてしまった暮らしがあったことを
ひとり噛みしめながら

街の夕暮れはいつも
そんな音色に包まれて

茜色の空を見ながら
そのメロディーが終わるまで

僕は自分の日常を重ねて歌っていた
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