暮らすように歌う/木屋 亞万
 
彼女はシャワーを浴びながら歌を唄う
水の流れに乗せて悲しい歌詞を
まるで日曜の午後のようなのどかな声で
でもどこか切実に聞こえてしまう
すごく心地よいのだけれど
 ジーンズはベランダにぶら下がって
 涙を洗剤で流したためか白く褪せている

彼は思いついたように叫びをメロディに乗せる
思いついたままに叫ぶことが唄うことであるように
腹から声を絞り出して頭の上へ飛ばしていく
くぐもった水のはじける音に合わせて
彼女の声に合流していくように唄う
愛の言葉をさりげなく告げてみる
彼女に聞こえていようがいまいが

彼女はフライパンを振り回し
包丁を全力で振り下ろす
キッチ
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