ジムノペディ /服部 剛
 
「オクターブ」という 
ぼくの素敵な詩友の本 
表紙を照らす 
オレンジの陽だまりが 
不思議な熱で 
夏風邪に冷えたぼくを 
温める 
頁を開くと、追悼詩。 
若くして世を去ったひとは 
空に溶け、雨になり、 
姿の無い存在で(銀河を巡り) 
地上の草花を潤す、 
雨だれの音。 
吹き渡る風に 
無数の草々が揃えて頭を垂れる 
誰もいない草原で 
椅子に腰掛け絵筆を持つ 
そのひとは 
いつまでも、この本の中に。 
詩集を読み終え 
最後の頁に咲いていた 
愛の花、一輪。 
頁を閉じた手元から 
いきてる魚になって 
本が、跳ねた。 
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