この夏は/高杉芹香
ばあちゃんは戦争中の貧しかった頃のことをたまに話してくれた。
母には厳しかったらしいが、孫のあたしには、いつも優しいばあちゃんが、あたしは本当に大好きだった。
ばあちゃんは平成になってすぐに死んだ。
そのわずか1年前か。
上京したてだった私は、「親孝行や」と言ってばあちゃんを東京に連れて来た母さんと、はとバスに乗って東京巡りに付き合ったのを覚えている。
18歳のあたしは、田舎姿のばあちゃんと手をつないで、明治神宮の砂利道を歩いた。
親のことはなんだかいつも恥ずかしい、恥ずかしい、と思っていたが、ばあちゃんのことはどれだけださいカッコを彼女がしていても、全然恥ずかしくな
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)