扉の向こう側/北斗七星
 






濃い木目の扉
開くと広がる球形の淵の牧場
白と黒の牛が浮かぶ


日傘をさす少女の顔
鳥の声
笑い声


理由を欲しがる人の
隣に気遣いすぎた時計を止めて


僕は鳥になり
僕は風になり
僕は雲になり


うっすらと見えるゼリーの少女
手から吹き放す音符の紙吹雪

僕は光の粒になり


もし欲しいものがあるとするなら
突然現れては消える
濃い木目の扉を与えてください


思い出はチョコレート
苦く甘く溶けていく

空に雲が溶けるように


光にも古いものと
新しいものがあるなら
肌に触る温かさにも
新しいものと
古いものがあるなら
甘く溶けてみたい



もし欲しいものがあるとするなら

濃い木目の扉のノブを回し
開くだけの僅かな力を与えてください


その向こう側に
斜めに浮かぶ少女は
ゆっくりと
日傘を回して笑っているはずだから


その微笑みが浮かぶから







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