蜃気楼/紫音
川縁の土手の上
砂利道がザクザクと泣く
バットを持った集団
野球
ではない
唐突に囲まれる
幾人にも
財布もなく
時計もなく
なんら渡すものもなく
そんなことはわかっていたのだろう
目付きが悪い
それだけの理由
殴り甲斐もないらしく
威嚇だけの時間が過ぎる
そして解放
すれ違い様
生意気だ、と
言われた理由も
目付きが悪い
のだと
視力だけの
せいでもないのだろう
日差しに負けた
伏し目のせいでもないのだろう
きっと
目付きが悪いのは
性格のせいで
生意気なのは
性格そのままで
くだらな
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