染めてくれない - dye scarlet over white –/橘柑司
 
イメージは白と赤。点でしかなかった赤が白を浸食していき、最終的には赤の方が支配的になっていた。ついさっきまで見ていた夢だが、思い出せたのはそこまでだった。今見えているベッドランプの黄色と、その光が届かない場所の黒という現実の色に上書きされてしまった。黄色と黒。危険のイメージ。
 やはり、喉が渇いていた。どうしてホテルの部屋というのはこうも空気が乾燥するのだろうか。ベッド脇のデジタル時計の表示は、二十三時半。二時間しか寝ていない事になるが、もう十分睡眠をとったような感覚だ。アルコールを入れないと寝られそうにない。幸い、この時間ならまだホテルのバーが空いているはずだ。僕はシャツとパンツを履き、最
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