夏の日/紫音
 
五年前
路面が煮え立つほど暑い夏
プールの栓を抜いたような夕立

中でぼくは
キミの嘘を受け止めた

小さな嘘
あまりに小さいから
雨上がりの水溜りに
そっ

浮かべてみた


三年前
ビルが蕩けて見えなくなるほど暑い夏
お風呂の栓を抜きながら夜

空を見上げて
キミの嘘を飲み込んだ

ちょっと大きな嘘
ノドの奥に引っかかるから
うがい薬と一緒に
ぺっ

吐き出してみた


一年前
不思議と涼しい風が心地よい夏
コーラの栓を抜いたような爽やか

日差しの中にぼくは
キミの嘘を忘れていた

すっかり消化して
しまっ
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