なんにもならない、夏/
ゆるこ
夏が始まった、合図は
とある田舎の公衆便所の片隅で死んだ
ごろりと横たわる、蝉の亡骸
子供たちは
入道雲に固形の夢を乗せ
大人たちは
ただ 暑い暑いと液状になる
若者は、なんにもなれないんだ
若者は、夏に嫌われてるんだ
飲み込まれる
夏の細胞に組み込まれ
いよいよ泣き出す蝉と
フェイントした蝉との狭間で
狡猾な表情を浮かべるあの子は
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