なんにもならない、夏/ゆるこ
 
夏が始まった、合図は
とある田舎の公衆便所の片隅で死んだ
ごろりと横たわる、蝉の亡骸
 
子供たちは
入道雲に固形の夢を乗せ
大人たちは
ただ 暑い暑いと液状になる
 
若者は、なんにもなれないんだ
若者は、夏に嫌われてるんだ
 
 
飲み込まれる
夏の細胞に組み込まれ
いよいよ泣き出す蝉と
フェイントした蝉との狭間で
狡猾な表情を浮かべるあの子は
 
 
 
 
戻る   Point(5)