そらせみ/umineko
空っぽ だよね
歌うために
まぶしい緑の
そのはざ間から
降り注ぐ 生きる意味よ
せみの命よ
蜜を吸う
歌うために
その
けたたましい鳴き声の
中にまぎれて
誰かの
短い断末魔を
君は聞こえるか
あるいは
聞こえないふりか
空っぽ だよね
歌うために
もう
実体は死んでいるから
思い出とか別離とか
そういうもので出来ている
夕立の
激しい間だけ
君たちは黙る
強い雨が
葉陰を叩き
君たちの意味を
消し去っていく
歌おう
私は空っぽだ
だからこそ歌う
私の
夏の間だけ
やさしい時間をもてたこと
空っぽの胸で
歌え
歌おう
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