流行/明楽
 
満ち足りた水盆から
たっぷりと
手のひらのうつわに水を汲み
満足しても つかの間
した した と
水は指のすき間から逃げてゆく

目の前を行き過ぎる
季節もまた
水盆から汲み上げた水のように
いつの間にか
切なさが漂う痕跡だけを残し
遠く 遠くへと 逃げてゆく

水を手のひらにとどめおくすべも
季節をとどまらせるすべも
なにも持たないわたくしですが
彼らの残す痕跡で
空っぽにも成りきれず

(そうなれれば まだ
 いくぶんか楽でしょうに)

いつまでもあいまいなまま
指のすき間から切なく
世界を垣間見ておるのです
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