孤独のしくみ/小川 葉
部屋のしくみ
部屋の壁に
エレベーターがある
時々音をたてて
上がったり下がったりしてる
今日は僕の階で
ドアが開いた
まだ誰も乗ってなかった
+
窓のしくみ
窓の外から
覗いてる人がいる
その人のことを
僕はよく知ってたし
知らないことも多かった
今日は窓の外から
中を覗いた
まだ知らない
僕がそこにいた
+
天井のしくみ
朝目覚めると
天井を
無数の鳥が飛んでいた
青い空、白い雲
彼らは家族なのか他人なのか
誰も気にしない
今日僕は
群れの中に生まれた
家族の意味も
その価値さえまだ知らずに
+
孤独のしくみ
部屋の隣に
病室があった
面会時間は過ぎてるのに
孤独の気配はなかった
今日は鳩の鳴き声で
目を覚ました
何事もなかったかのように
病室は消えていた
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