裁き/1486 106
あの人は罪を犯した
平和で満ち溢れていた町で
私はなんの前ぶれもなく
大切なものを失ってしまった
拘置所で犯人の顔を見た
まったく見覚えのない人だった
町の人たちも誰一人
あの人を覚えている人はいなかった
この町のルールに従って
被害者が裁きを下すことになる
だからこの町に犯罪はなかった
死刑になってまで犯罪を犯そうとは考えなかった
今までは
町の人達は一斉に叫んだ
「殺せ!奴を殺してしまえ!」
私はその時恐ろしくなったんだ
こういう気持ちが犯罪を生み出すと
あの人は罪を犯した
平和で満ち溢れていた町で
もしかしたらあの人だけが
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