原始人の夏/yo-yo
クセルの操作も忘れた
もう敬語も使えない
ひげも剃らない
石を投げて
川岸のくるみの実を落とし
殻を砕いて食べる
すべて石の作業だから石器時代だ
と彼は言う
夏だけを生き延びる
太陽と水に焼かれ
ぼく等の体はすぐに燃える
砂だらけのちんぽで小便をする
川面に浮いて流れていく
原始人のうんこは太くて長かった
ときには縄文の川は精霊となり
茄子や胡瓜とともに死者たちが送られていった
河童になった少年は帰ってこない
でも泣くな
きみ等には秋がある
と原始人は言う
おれは夏が終ればいきなり冬だ
冬は裸では暮らせない
熱した岩を抱いて
背中の雷雨をやり過ごす
からだも岩も水になってしまう
やがて雨は
美しい光の粒となって空に散る
川藻の匂いがする虹だった
空の橋を渡る
夏の背中が見えた
うつむいて横断歩道を渡るひとも見える
猫背のままで
公園の林へ消えてしまう
あれから
彼に会っていない
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