原始人の夏/yo-yo
 
耳を立てて
とおくの雷鳴を聞いている
虹の匂いを嗅いでいる
夏はどこからか
ぼく等の原始人が現われる

川は流れつづけているので
終日ぼく等は瀬にさからって泳いだ
唇まで冷えきったら岸へ上がる
縮んでしまった青い唐辛子のぼく等
原始人だけが毛が生えている

首がみじかくて猫背
おなかと背中の肉が重そうで
歩くのも泳ぐのも鈍い
ぼく等よりも大きくて不恰好なもの
それが原始人の定義だった

彼はときどき血痰を吐いた
あるいは歯ぐきを病んでいたのかもしれない
血がでない傷もある
と彼は言った
勤勉な現代人にはなれなかった
おれは退化しつつある人間だ
エクセ
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