「風が生まれるとき」/ベンジャミン
 
あなたはまるで
矢を放つ前の弓のように

身体をしならせ
水平線を見つめている

遥か遠くの波間では
違う色の青を背負った海鳥が
白くひるがえりながらたわむれている

大きく息を吸い込んだ
あなたは目を閉じて何かを待っている

足元の砂が
小さな輪を描きながら
ゆっくりと輪郭を膨らませて
舞い上がってゆく

あなたは
掲げていた両手を
少しずつ広げて

そして手のひらの中に芽生えた熱を
そっと開放する

その時

遥か遠くの海鳥が
楽しげに宙返りするのを

あなたはやさしく見つめている
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