月と夜の森/
こゆり
月夜の泡沫(うたかた)
ひらいた辞書に
針をおとす
夜の端を
そっとめくると
月は
その裏側で
輪郭をにじませる
言の葉は
月影を背負い
蝉時雨の風と
果てない旅に出る
もう戻ってはこない
流れゆく時間が
水面に浮かび
ゆっくりと
水の底へ
眠って
照らされるのは
温度を失ったものたち
影は無言で
その所在を伝える
繰り返される
耳を澄ますと
聞こえるしらべ
銀色に包み込む
月の鼓動
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