ヒミツ/小原あき
 
いにしようと
心に誓ったはずだった




夫のヒミツを本棚にしまうと
わたしはわたしのヒミツを確認しにいった
それは
文庫本の並ぶ
小さな小さな本棚の
一番好きな小説の
一番好きなページに挟まれていた




一番上のヒミツは
へそくりは料理本の間に挟まっていること


二番目のヒミツは
幼稚園の時、おもらしがなかなか直らなかったこと


三番目のヒミツは
夫の密かな夢のために少しずつ貯金していること


四番目のヒミツは
鸛が来ない本当の理由




その人は
わたしの四番目のヒミツまで読んで
そこからはもう
読むのをやめてしまったらしい


四番目のヒミツだけ
濡れて乾いた紙みたいに
しわしわになって
だけど、大事に
丁寧に
他のヒミツと重なっていた



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