鏡の中のわたしたち/小川 葉
ここにいても
いいですか
という
人がいるので
その人は
人なんだと思う
思うだけで
人は
人になってしまう
わけではないけれども
人の価値は
そのようにある
あなたにも
その人にも
鏡にうつすように
あなたの顔を見る
ぼんやりと
わたしたちの
命がうかぶ
幼いころは
あたりまえにできたこと
それなのに
どうしてこんなにも
かんたんなことなのに
わたしたちは
いつからか
鏡にうつる
わたしたちは
わたしだけなのだと
小さなわたし
たったひとりだけなのだと
長い間
錯覚していた
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