ミンミ十字路で、ぼくらは微笑んだ/角田寿星
 
る者にふさわしく
いろとりどりのまぼろしの十字路を
ネイティヴの慣習にならうように
沈痛の微笑みをたたえたまま

いつか船は出航したのだろう
しろい砂のなかを
どこまでもどこまでもどこまでも
エマさんはベンチに腰かけて編物に余念がなく
ネモは緑の丘でながい杖にもたれて立ちつくす
通過する者は
通過する者たちと視線を合わせない
果てはあるが終点のない
夕闇があたりをつつむと
もうすぐ朝 空を見おろす
南をさした十字路の舳先でぼくはおおきな伸びをする

すこし涼しいね エマさんがささやいた
夜からの風をふかく吸いこむ
かつて十字路で肩を組んだ記憶
距離と時をおいてネモもぼくも振り返り
ああ 涼しいね
同意のことばを漏らす
いろとりどりの十字路で
ぼくらはいつか再会し 微笑んだ

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