ミンミ十字路で、ぼくらは微笑んだ/角田寿星
すこし涼しいね エマさんがささやく
たしかに風が吹いている 夜からの風だろう
もう七月で冬の足音がきこえてくる
いろとりどりの十字路 ここは見晴しがいい
少し背伸びをするだけで
100キロ先の海が見渡せるところ
エマさんの髪もネモの長いコートもみえる
十字路のはじっこで三角形に並んで
ぼくらは 互いの名を呼びあった
しろい大きな道をくだっていく
かつてここで新種の恐竜が発掘された
鏡のむこうに鎮座する十字路
白鳥の北十字星はここからみえないし
太陽は西からのぼる
ネイティヴは言いたいことが言えないので
みんな笑顔が貼りついている
ぼくらは通過した 通過する者
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