蝋燭/小川 葉
 
 
蝋燭が
消えそうになると
まだ燃えている
知らない蝋燭がやってきて
消えてしまう前に
やさしく火を貸してくれる

白く溶ける
蝋を流しながら
傷跡のように
それは残る

傷つくことをあきらめた
蝋燭たちは
みずから蝋燭であることを辞め
焚き火のように
燃えている

その虚しさを知る

侘しさとか
助けたいとか
わかりあうとか
嘘ではなく

記号として
記号は
記号として
白けてしまい
消えることを
あきらめたなら
あとはただ
ひとり消えるまで
息絶えるまで
耐えながら
蝋が溶けて
なくなるまで
涙をながす

そのとききっと
火を貸してくれる
やさしくひとり
灯る蝋燭は
あなたの隣にいる人に
違いないのだ
 
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