妊婦のロボ子さん/モリマサ公
後十日もするとあたしたちは出産に立ち会う
ロボ子というのはあたしのことです
今度は反対側の腹をけられて足の裏の形があらわれた
ぴたぴたのワンピをきているものだから
それはそれは美しかった
デジカメをすかさず切る夫
ロボ子というのはあたしのことです
「きれいだね、世界という意味でだろうか」
ロボ子というのはあたしのことです
「まさかするとはおもわなかったからな」
再生ボタンで画面を確認しながら
「きみしかいなかったよ」
と夫がつぶやく
ロボ子というのはあたしです
ロボ子というのはあたしです
家路にはいつもの倍かかり
送られてきた方の本を手にとり
窓の外を横切るものをみる
飛行機
みんな心臓のようなエンジンで音もなく
いくつかがなぜか泣けてくるように
なつかしい
ロボ子というのは
あたしみたいな輪郭線を持った女の子のとても流動的な部分だから
あたしのようであたしでない
とり
とり
ひとりぼっちの太陽
とり
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