あの子のあの頃/木屋 亞万
 
汗っかきな子でねぇ
いっつも首にタオル巻いて
シャツの首元なんかすぐに
茶色くなっちゃってねぇ
ほんと汗ばっかりかいてたよ

あの子の座ってた石は
すぐにわかったな
お尻の形に濡れてて
顎から垂れた汗の跡が
砂に残ってたっけ

夏は暑いもんだって
クソ暑い中走り回って
麦茶がぶ飲みして
腹壊して夏バテして
それでも朝には元気よく
出掛けて行ったよ

 あなたの事を尋ねると
 みんな夏を思い出す
 夏は暑いものだからと
 暑さも汗も涼しさも
 丸呑みするように
 無邪気に笑う
 いつも生き生きと
 存在していた

今でもあの子のシャツはね

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