白熱 サイドB/佐々宝砂
 
り過ぎてゆく自動車の群が 透明なゼリーとなって風に揺らいだ 俺もまた透明なゼリーに変じて 微風にすら揺らめきかたちをなくした 世界はひとつの白濁する海となり 俺はその海に漂う最も矮小なクラゲのひとつに過ぎず 優しい夜の魔物たちは白虹に耐えきれず雲散霧消し 安らかな汚物にまみれた檻すらもう存在せず 俺は矮小なクラゲなりの全身全霊をもってして 白い円盤に対峙しなくてはならなかった いつもだ 朝がくるたびにいつも

俺は誰にでもなる 誰でも俺になりうる 願われるなら俺は女にも男にもなろう 乞われるなら俺は生贄の羊にも女王にもなろう 俺の内面がいかなるものであろうとも そんなことはどうでもよい 俺の内
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