細長い一日/nonya
細長い一日の側面には
たくさんの出窓が一列に並んでいた
窓枠には下手な絵が嵌め込まれていたから
僕は脇目もふらず
いったりきたりするしかなかった
細長い一日の両端には
それぞれにひとつずつドアがついていた
けれどそれは両方とも入口だったので
僕は毎日欠かさずに
出口を探し続けるしかなかった
ある日二年半ぶりに堪忍袋の緒が切れて
駄々っ子みたいに暴れ回っていたら
うっかり細長い一日を蹴破っていた
足の裏に感じる地面らしき感触
スネ毛をそよがせる風らしき感触
ふくらはぎを軋ませる重力らしき感触
僕は嬉しさのあまり
怒っていることも忘れて二三歩歩いて
[次のページ]
戻る 編 削 Point(9)