パントマイム/クリ
 
                        
「右手と左手のための協奏曲」より


なだらかな起伏を描く丘陵地のどこか
太陽と雲が作るまだらを貫く
優しい国境
沈黙の春は だく足で巡り巡る


いつまでも のろのろと永遠に向かって
魚の眼では気づかないほど ゆっくりと
転がっていく干草ロール
 ななつ やっつ


季節は南からほどけ始め
雨雲は西から確かに移ろう
 (円運動を伴わない永久機関)
夜となく昼となく
伏流水は地層に澱を残し
日は昇り日は沈み
小径はいつしか 後悔のように褪せる


 (役者も観客もいない無言劇)
国境を越える風のカノン
地平線に溶ける間奏曲
夜の気配にちぎれていく光
 ひとつ ふたつ




              Kuri, Kipple : 2004.07.19
[グループ]
戻る   Point(2)