「迷い森」/ベンジャミン
 
透明水晶の信号柱から
七つ先の林道をかけあがると

ずいぶんと見晴らしの良い高台に
ブナの木が一本立っている
木の実を転がしながら

その細い林道をしばらく行くと
もう帰ってはこれないのに

さっきも一人すれ違った
僕は懸命に止めようとしたけれど
その人もまるで透明で

僕の身体をすり抜ける
いや

もしかしたら
僕が彼をすり抜けていたのかもしれない

僕は落ちた木の実を拾って
それを道標にしてきたのに

透明水晶の信号柱は
ただ青く点滅しているだけで

そこにはもう道なんてなかった
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