花火/1486 106
屋台の行列と祭囃子
利根川の水面が映し出す宵闇
藍色の浴衣と広島風お好み焼き
袋の中で呼吸する金魚
やがて遠くの方から花火が上がると
人々は一斉に夜空を見上げる
不意に懐かしく感じるのは
どこか似ているからかもしれない
子連れの夫婦 ふと目をやると
父親は僕とほぼ同い年
いつかは僕も同じように
神社の境内で記念写真
花火は一瞬で消え去っても
人々の心にその姿を焼き尽ける
不意に切なく感じるのは
どこか似ているからかもしれない
遠退く喧騒と車の渋滞
人々は足早に家路を急ぐ
静まり返った会場に残るのは
夏の余韻と少年の淡い恋
花火の音は高らかに鳴り響き
砕けながらも光を撒き散らす
それははかなくも強く生きる
人の姿とどこか似ている
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