『消しゴム』/東雲 李葉
足りない頭で欠けた自分を探しています。
どこかで失くした昔の自分。どこかに忘れた本当の自分。
完全なんて有り得ないんだと、完璧主義者が笑っています。
不完全は可笑しいですか?僕は定規じゃありません。
どこから見たって歪で不細工な形状で、
誰もが持ちにくそうに持て余し、小さな僕を捨てていくのです。
昔はもっと滑らかな表面をしていて、
僕を使う人は皆、隅まで大事にしてくれたのに。
いつから僕は足りなくなってしまったのでしょう。
手に入るものが少なさ過ぎて不釣合いだと思うのです。
間違いなら自分自身で直して下さい。言えたらどんなに良いでしょう。
けれどそれは僕の意味を無くすことにもなるのです。
あ、ついにあなたも間違えましたね。
完璧主義者がバツの悪そうな顔でうつむいている。
嘲笑いながら曲線を取り込んでゆく僕。また一段と黒くなっていく表面。
意地悪な声で、完全なんて有り得ないんですよと、
真っ直ぐなあなたを諭してみましたが、
間違いを犯すことさえ出来ない、僕よりマシだと思うのです。
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