現/エチカ
 
びた空気が訪れ、
夜の旅人は、扉を開けろと私に言う。










私は夜を嫌う


そこに在らんとするものは
静寂やら絶望という仮面をかぶった夜だからである
あるいは嘆きに似た夜の一人芝居
夜という名の塵芥


夜は時として唐突であり
真夜中のふりをして
断片的にひゅるりと人の心の隙間に滑り込む
夜のネオンのように下品だ



私は扉を開けて、
その女にこういった

「ここはあんたのような女が来るところじゃない、
 私はあんたに憐憫など持ち合わせちゃいない
 とっととどっかへいっちまいな。
 ここでは、快楽しか必要としない。
 それを無くしたあんたはただの空蝉だ」




そういうと、そこにいた女は静かに姿を消した。
夜はまた一陣の風と共に、鬱蒼とした影を連れて過ぎ去った。
煌々と照らされる読書灯の火を消すと私はまた深い眠りについた。


夜はまた、夢の中に幾人かの女を連れてくるだろう。
「こんばんは」と。誘いかけるように。

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