現/エチカ
寝付けない夜だった。
時計の針は午前2時を指している。
不気味なほど鬱蒼とした夜に一人の女と出会った。
女はただそこにとどまることを知らない生き物のように
夜の中で頭をもたげている
「わたしは物悲しいのです
ここであなたを待っていました
私は夜を纏いながら
一切の快楽を脱ぎ捨てました」
女の足元には脱ぎ捨てられた快楽が一枚
ひらり、と笑っている
それは一滴の影であり
垂れ流された墨汁のように澄んでいる
まるで、一筆で描いた女の髪のようであった
すらりとしたその出で立ちで、
女はやんわりと嘲笑し、私をためしている。
じっとりとした湿気を帯びた
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