冬の港で生まれた/たりぽん(大理 奔)
 

行き先も知らない船から
紙テープを投げて
わたしは今日、生まれよう
別れを告げるために投げるのではなく
離れるために切れるのでもない
風に大きなループを描き
旅立つために

   出発や到着は旅ではない
   目指していくこと
   そしてさまよい続けること

母よ、私の紙テープを離さずに
切れるまでたどり続けてくれた母よ
防波堤のような両の手をすり抜けて
わたしは今日、生まれる
港が遠くなるほど
行き先は近くなって

五羽の海鳥よ
防波堤の途切れる先まで船を追い
生まれるわたしの家族になれ
泡立つ冬波よ
防波堤の先で胸を揺さぶり
旅立つわたしの兄弟となれ

ひとは誰もがそれを切って旅立つ
行き先も知らない船から
紙テープを投げて
今日、生まれる




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