鳴家/佐々宝砂
 
きなさい。
迷惑顧みず嘆きなさい、
心のままに叫びなさい、
そして、
自我を喪失しなさい。

鳴家はいつも乾いた音で
その乾き方といったらまるで冬の枯野のようで
冬の枯野の七倍くらいに無意味だった。

わたしが抱えたはずのエネルギー、
わたしの家が持ったはずのエネルギー、
熱量保存則が冷徹に警告するように、
意味もない音と化して雲散する、

鳴家よ。
小鬼の姿したちっぽけな妖怪よ、
おまえが存在していて
わたしの家をかたかたと鳴らすのだったら
わたしはどんなにか嬉しいだろう。
[グループ]
戻る   Point(9)