いつか海へでる船/水町綜助
陸があって
呟きがあって
知り合った
冬の夜に
繁華街の路上に
落ちた割り箸の
片割れみたいな
よごれ方は
気に入ってる
夏の
失明する真昼に
無数の甲虫が光って
あぶらぜみが鳴いていた
深緑を身体の中から
焼き棄てるよう
立ちのぼる
煙に向けた
黙祷がよく似合う
その頬には
海があって
カーテンより白い
光がある
さまざまな
それぞれ
集まった小石が爆発したときから
ひとつひとつが
カチンと音を立て
その気の遠くなるほど
多くの音の連なりの先に
血と肉を纏って
あるところに
落ちた
さまざまな
それぞれが
落下の衝撃
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