風のオマージュ 番外編/みつべえ
は、そのとき途中下車した駅の売店で買った観光案内用のパンフレットに載っていたもの。
長野県の黒姫。
そこら一帯は旧称を「柏原」といい、小林一茶の生地である。
パンフレットによれば、一茶は少年の頃、継母に反抗して柏原の地を出奔。爾来、流浪にあけくれ、三十年ぶりに帰郷したとき、この一句をよんだという。
これがまあ つひのすみかか ゆきごしゃく
「つひ」は「終(つい)」で、「つひのすみか」は「終焉の地」のニュアンス。
勝手にパラフレーズしてみると、
苦しかった放浪生活をおえて帰ってきたら
わが故郷は深い雪に埋もれているよ
やれやれ、ここが俺の終焉の地というわけか
ため息が出ちまうよ
みたいな感じ(笑)
いやいや、ヒトゴトじゃない。
私の「つひの栖」はどこになるのだろう。
現在に生き惑い、ささいなことに関わっているうちに一日を棒にふってしまう生活のくりかえし。
ふん。
明日のことなんかしるもんか。
まして「つひの栖」など。
わが一茶の絶唱。
けふの日も棒ふり虫よ明日もまた
※「めろめろ」59号より転載
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