灯台/かいぶつ
逞しい声を持つあなたの
輪郭の確かな言葉
私のか細い声も存在も
綿毛の如く吹きとばし
私の頼りは土の温もりだけとなった
私に備わっていないものを
自然に身に付けているあなたを
私は心のどこかで忌み嫌い
心のどこかで羨んでいました
あなたに追い着けず
私の息は絶え絶え
湖面に映る私の姿
曇り空を背景に
やがて俄雨が掻き乱していった
私の憧れはあなただった
遠い異国の理想の姿
しかし理想への強い憧憬は
現実に白布を被せる
私は目隠しされた蛇になる
ならばと視界から遠ざけ
あなたとの距離を置き
あなたの声は粗悪だと
あなたの言葉は下品だと
自らに刷り込み
半端な自分を埋めようと
未熟な自分を守ろうとした
臆病な私
私はこのままぬくぬくと
土の中に佇むのか
私はこのまま頑なに
あなたとの隔絶を保ち
誤解を育て卑小な自分を見過ごすのか
私は私自身をしっかりと見据え
等身大の私をあなたに明かすため
心に灯台を持ちたい
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