こんな堤防の上をあるいている/水町綜助
 
何かにつけても
茫洋として寄る辺のない
暗い淵が見えるにもかかわらず
湿りを含まない
重さのない空気を吸い
吸うばかりでそのために
くらり
反転した写真のような明るさと笑顔の中
街を歩いては喝采している

たとえば郊外の貯水池へ行く
危険と書かれたくさりの掛かった堤防は
遠く遠く延びて
右手に広々とした池の水面(もはや湖面と言ってしまっていいほどの)が初夏の
風にさざ波をたてて
青々としているかと思えば
ほとりには真緑の
甘みを持つような水がまるく打ち寄せている
しきりに

堤防の左手は急勾配の斜面で
身を屈め草いきれを嗅ごうとすれば
草の生い茂るちょう
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