父/二瀬
あまりよく、覚えていない
ふらふらと適当に帰りついた夜
白く重たいドアの先で
お父さんが
ガチガチに冷凍されていて
あれ、しっかり保存されていたんだ
そうドアの前の過去に
気が付ついたのです
久しぶり
そう言って、むかし服の裾を引っ張ったよう
な指使いで
冷たい部屋から取り出して
無理だろうな、と思いつつも
レンジで解凍してみました
なんだか、可笑しいよね
昔
お父さんは
冷蔵庫だった気がするのに
私
凍った目をむいて
いたいと
確かにそうあなたに言った気が
するのに
そのまま
蒸発していった背中と共に
私のこどもは
行方
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