ヨウ素液世界/kauzak
携帯電話のカメラモードを
セピアにセットして
梅雨の晴れ間の街を歩く
写り込む世界は
春まだ浅い砂浜で風に吹かれ
総てをなくしてしまったことを悟った
あの時のまま止まったように
見えて
そのイメージが
まだ自分に似つかわしいと
感じてしまうことが口惜しい
いっそ写された光景が
消毒されてまっさらになって
僕の中に堆積するように
感じられるならば
浮かび上がるきっかけに
なるというのに
セピアはセピアのまま
切り取られるから
通常モードに切り替えることでしか
僕はまだ
やり過ごす術を持たない
戻る 編 削 Point(12)