懐かしい、鼓動の中で……/緋乃村燿介
 
寂しさを紛らわす酒を飲むより
寂しさを分かち合う酒を飲みたい

あの日々を馴れ合いだと言うのなら
そう言えばいいんだ

あの日々を消したい過去にしたいのなら
そうすれば良いじゃないか

青く蒼く広がる海と空に文句をぶつくさ言いながら
ジリジリと肌を焼く光に目を細める

あなたの幻影が見えた気がして立ち上がった僕が
次に気が付いたのは白い天井と消毒液の溶けた部屋だった

「気が付きましたか?」白い服の女性にそういわれて泣いた
不思議そうな顔をしていた女性は、そっと抱きしめてくれた
あの温かい音に……鼓動に精神を深く溶かして僕は眠りについたんだ



揺り篭で眠るような……母親の胎内に戻ったような……そんな、気分だった。


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