[Museum]/東雲 李葉
海岸で拾った貝の殻。
繋いだ父の手の温もり。
ぽつぽつ交わした言葉の端々が、
青いボトルに詰められている。
隣の茶色い瓶の中には、
初めて隣になった席。
染めるたび明るくなる髪の毛。
友達でさえなくなった夜が、
溶けかけながらもきちんと尖って浮いている。
「お手を触れないでください」と、
赤字で注意がされてなかったら、
鞄の中に詰め込めるだけ、ここの全てをかっさらいたい。
角を曲がるとそこはどこかの街角のようで、
優しく微笑む母親と手を繋いで歩いていた。
思い出せないその笑顔があまりにも鮮やかにそこにあるから、
声を聞いたら狂いそうで僕は走って逃げ出した。
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