セミダブルベット/モリマサ公
 
セミダブルベット

アルファベットは外に吹き出し
また自動とかかれた扉がひらき
道路ににぎやかに人混みが揺れ
飛ぶということについて考える
指を折りながら時間を値踏みし
白ビニール袋が後に追いやられ
寝てるホームレスを覗き込むと
自販機が時々うなり声をあげて
空に人型にチョークは線をひき
日常という文字をくわえている
ネズミが走り輪郭がぶれて滲む
身籠るというのは難解だ
街路樹のうつろう中央分離帯で
影に祈る珊瑚色の裸足の歩行で
まぶたが裏返る度にくりかえし
スパンコールが落ちて燃えてる
ゼロから数字は突き抜けてゆく
剥がれた皮膚一枚が人型になり
ビルとビルのガラス窓の隙間の
脂肪色した空へカラスが浮かぶ
内側に並んだベットのきしみに
上がる歓声あたしたちの息継ぎ
皮膚の油はうつろにしみこんで
運動場で異常にのどが渇いてる
セミが鳴いているのがきこえて
おびただしい明け方の約束から
いくつかを正しく選んで音読し
光に感情を残酷だがさらしてく

「こわいよね、少し」





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