雨だれ/mizu K
、そうでしょう
ね。そんなとりとめもない話をしてその人のところを辞した。
玄関先にアジサイが咲いていて、もうずいぶんと色づいている。
小雨の中、ぼうと眺めていたらどこからか、かつち、かつち、
と音がしている。それは先だっての拍子木の音に似ているよう
だがすこし違う。方角もすこしずれたところから聞こえる。そ
もそもその人は故なく鳴らすような無粋な人ではないし。たぶ
ん、似たような何か、雨だれかなにかが打ちつけているのだろ
う。その音に送られて帰途についた。
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