雨だれ/mizu K
 

1. カスタネット

紫陽花の花という花がてっぺんまで匂いたち、その色目も日に
日に濃くなっていく有様を窓から見ている。雨粒がはらはらと
落ちて窓ガラスにもかかる。風があるのだ。軒下の方で雨だれ
がしているようで、もうずいぶんと前から、かち、かち、と音
が聞こえる。もうずいぶん、と思うのでおそらくもうずいぶん、
と雨も降り続いているのだろう。室内も雨にけぶってきた。う
っすら靄がかかったようで本棚の背表紙が読み難い。ギターの
肩に水滴が落ちてくる。それはカスタネットの音に似て。机の
上の琺瑯の水さしには水滴がびっしりついていて、室内を球体
にしようと目論んでいる
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