風船/海渡
 
ずっと欲しくて
離したくなくて
それでも僕の手から離れた風船
ふわふわと
確実に
届かない場所にいってしまう
ふわふわと浮かび上がる風船
僕は鞄の中の凶器を手に取った
黒くて冷たい
確かな狂気
それを風船に向けて
別れも告げずに引き金を引いた
そうして割れた風船は
天に昇らずに地に落ちた
それを見て嗤う僕
離れていったのなら
離れていくのなら
壊れてしまえと
落ちてきた残骸を足で踏みつけた
戻る   Point(0)