コップ/アンテ
喉もと
鏡で位置を確かめる
思い描いた真っ直ぐなラインに
鋸の歯をあてがい
両手で柄を握りしめて
鏡に写ったわたしが
ゆっくりと押す
引く
ずうう
細胞が裂ける
肉が千切れる
ずうう
わたしの首を
金属の板が分断していく
コップに入れた水が
夕方には減っているように
わたしだったものが
少しずつ
わたしではなくなって
空っぽになった時
死は自然に訪れるのだろう
漠然とそう思っていた
時にはコップが倒れて
水がこぼれてしまうかもしれない
けれどどうせ水は蒸発して
跡形もなくなるのだ
だれかがコップを起こしたら
こぼれた事実さえ残らない
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