コインロッカー/小川 葉
ある日家に帰ると
コインロッカーがあった
お父さんも使っていいのよ
妻が言うけれど
いったい何のために使うのか
僕にはわからなかった
それでも
次々とうまっていく
コインロッカー
妻も息子も
父も母も
妹夫婦もみな平気な顔で
何かを入れて旅立っていく
誰もいない明け方の駅で
僕は両手に大きな鞄を持って
始発を待っていた
そうか
ここは駅だったんだ
家族
ひとりひとりのための
鞄をコインロッカーに入れて
電車に乗る
いつのまにか
家族みんながホームにいて
僕を見送ってる
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